麻酔方法

和痛分娩の方法として硬膜外麻酔を行います。
腰から腰椎硬膜外腔に細いチューブを挿入し、麻酔薬を注入して弱い下半身麻酔をかけ疼痛をブロックします。
分娩直前の肛門周囲の痛みが取れない場合は脊椎麻酔を併用することがあります。

和痛分娩の副作用

主な副作用(合併症)は以下の通りです。

1)硬膜外に留置したはずのチューブが血管内に入ってしまうことがある程度の頻度で起こります。耳鳴り、口周囲のシビレ、金属味といった中枢 神経症状が出現するとチューブが血管内に入っている可能性があり抜去しなければなりません。
2)くも膜下注入の場合、脊椎麻酔の状態となります。この状態で麻酔薬を多く注入すると呼吸不全などの重篤な合併症が起こりえます。下肢の運動・知覚麻痺が急激に現れた場合は注意が必要です。(投与薬剤が少量であれば肛門周囲の痛みが取れない場合には有効な麻酔方法です)
3)鎮痛の硬膜外無痛分娩による神経障害が永続するのは稀と言われていますが、血腫や膿蕩を形成する場合には、外科的治療が必要となることがあります。
4)処置後の頭痛が起こることがあります。安静・補液で改善することが多いですが症状が強い場合はブラッドパッチ(自分の血液で穿刺孔をふさぐ処置)が必要になることがあります。

その他の症状の出現頻度(おおむね)
腰背部痛:30-40%、低血圧:20%、血管内注入:2%、穿刺後頭痛:1%、クモ膜下注入:頻度不明、硬膜外膿瘍形成:1/1万、硬膜外血腫形成:1/19万、神経障害:1/10万

合併症の発症増加が危惧され和痛の処置ができなくなる場合があります

1)体重増加が著しい場合、非妊時から15kg以上の増加
2)体重75kg以上
3)全身の浮腫が強い場合
4)脊椎の手術既往がある場合
5)低血圧の場合   など

分娩に及ぼす影響

硬膜外麻酔による和痛分娩では痛みが軽減する代わりに陣痛が弱くなり分娩所要時聞が長引く傾向にあります。
1)微弱陣痛のため吸引分娩となる可能性が高くなります。また、異常分娩による帝王切開が増加(約 2倍の頻度)すると言われています。
2)陣痛が弱くなり産まれない場合は和痛分娩の薬剤投与を止めるか(もしくは帝王切開で分娩するか)の選択が必要になる場合があります。
3)自然分娩より子宮の戻りが弱い場合があり分娩時の出血(弛緩出血)が増える傾向にあります。

当院での硬膜外麻酔分娩は次の要領で行います

  1. 分娩予定日の前(37-38週に)日程を決めて計画的に陣痛をつけていきます。
  2. 特に初産婦さんは子宮口が開大しにくいので前日に入院し頸管熟化目的に頚管拡張処置や薬の内服などしていただきます。
  3. 子宮口が約4-5cm開大したところから麻酔薬投与開始となります。
  4. 麻酔薬に少量のオピオイド(医療用麻薬)を添加します。
  5. 痛みが十分取れない場合は薬液を追加注入、もしくは穿刺しなおします。脊椎麻酔を併用することがあります。
  6. 夜間(18-8時)は陣痛促進剤・麻酔薬は使えないため、当日に生まれないと判断した場合は夕方に処置、投薬を中断して翌朝からの再開となります。
  7. もし夜間(18-8時)に自然に陣痛が強くなった場合は鎮痛剤は使えませんので自然分娩となります。

計画している日程の前に陣痛が来た場合は平日の日中であれば(ほかに分娩の方がいない場合など)可能な範囲で対応しますが、合併症のリスクを考慮して夜間(18-8時)および週末や祝日には硬膜外麻酔はいたしませんのでご理解ください。